大判例

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東京高等裁判所 昭和27年(う)1334号 判決

以下は、判例タイムズに掲載された記事をそのまま収録しています。オリジナルの判決文ではありません。

(判旨)

一、複数行為のそれぞれが、仮令業務上横領の罪の同一類型に該当する場合であつても、これを包括して一個の犯罪行為として観念するを相当とする場合には、公訴事実における罪となるべき事実の特定として、その行為についての日時、場所、被害者の氏名、被害額等の訴因を一々具体的に示すの要はなく、日時についての始期と終期を掲げ、場所についてはこれこれの外何個所とし、被害額についてはその合計を示すだけで充分である。

所論原判示第一、第二、第三、(一)及び第四の各所為は、原判決擧示の証拠によつて認め得られる如く、その行為の具体的形態において犯罪類型を同一にした複数の行為ではあるにしても、孰れも、同一場所においての短期間内における行為に属し、その動機、手段、態樣を同一にし、その犯罪期間における心理的経過において犯意の単一なることを認めるに相当なるものあるに徴し、これを包括して一個の業務上横領の罪と観念すべきを相当とするをもつて、右四個の各事実に照応する本件各公訴事実において、単に右に述べたような概括的表示をしているからといつて、既制力の観点において、訴因の明示がなく罪となるべき事実の特定ありとするになお足りないものありとするを得ない。

二、原判決が被告人に対して認定した事実は、被告人は甲株式会社書記補として同会社伊那出張所外務係長兼赤穗支所主任となり物品の割賦販売契約の募集及び日掛金の集金等の事務に從事中、昭和二六年一〇月一三日頃から昭和二七年二月七日頃までの間に乙外九名から集金した掛金六八、八六五円を保管していたのに、これを自宅その他で擅に生活費その他に充て費消して横頭した、というのである。

そこで職権を以て按ずるのに、被告人の右所為たるや、約四ケ月余に亘り回を重ねて行われたものであるが、その情況から観れば単一又は継続の意思の発動によるものなることを推認することができ、しかも、被害法益は明らかに単一であつて、いずれも同一の構成要件に該当するところよりして、これを包括して一個の罪を組成するものというべきである。すなわち、被告人の所為は、まさに、刑法第二五三条に規定する業務上横領罪の一罪を以て論ずるのが正当である。しかるに、原判決は、被告人の判示所為を目して業務上横領罪の併合罪として被告人を処断しているので、原判決は法律の適用を誤つた違法を敢えてしたものといわなくてはならない。

(説明)

刑法第五条が廃止された後において、從前であれば連続犯として取扱はれていたもの総てが併合罪として処置されるとなると実体法上においても亦手続法上においても何となく不都合な影響が現われて来た。そこでここに包括一罪というような考え方が再検討され右の連続犯のうちのあるものについてこれを現行法の下において単純一罪と観念することは可能か、そうだとすればその要件はどのよように規定さるべきであるか、又その起訴状における訴因の明示方法或いは判決における事実摘示としては如何にすべきであるかが問題として登場して来たのである。今ここではこれ等の当庁判例の最近のものを掲げたわけであるが、更に包括一罪たるの要件について代表的のものを挙げると二七・一・二九、第十二刑判決(二六(う)第五、一六三號窃盜被告事件高裁判例集第五卷第二號刑一三〇頁)及び二七・一・三一第八刑判決(二六(う)第二、六八五號業務上橫領被告事件同卷第三號刑三一五頁)があり、その後二七・五・二二、第九刑判決(業務上横領被告事件)、二七・六・一七、第九刑判決(二六(う)第二、七〇〇號業務上橫領被告事件)が加わり、いずれも同一構成要件に該当する単一若しくは継続した意思と被害法益の単一若しくは結果の単一をその骨子としている点は全く同一である。特に注意される点は、大多数が横領罪特に費消又は着服横領の事案が多いことである。次に訴因の特定方法に關しては前記十二刑の判決及び二六・一二・二六、第十一刑判決(二六(う)第二、五一六號業務上橫領事件)があり、判決の事実摘示方法としては二六・一〇・二三、第五刑判決(二六(う)第三、一〇二號公職選擧法違反被告事件、同卷一二號一六二二頁)及び二六・一二・二七、第一四刑、判決(昭和二五年政令第三二五號被告事件)等があり、大体において本二六事件一の判示のように從前の連続犯における判示と同一程度の概括的な方法で訴因の明示も判決の事実摘示も十分なりとするのである。これによつて判例の動向は窺われるであろう。

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